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プログラムレポート ~先端科学技術研究センター・駒場キャンパスII見学~

2010年2月12日

第3期EMPでは、1月16日に東京大学駒場キャンパスIIにある先端科学技術研究センター(以下先端研)の見学会を行いました。先端研にはさまざまな学問領域から先端的課題を扱う研究室が集まっており、そこでどのような研究活動が行われているのかを学ぶことが見学の目的です。

まず最初にお話いただいたのは、先端研の宮野健次郎所長です。先端研における研究活動の概要について説明をしていただきました。ミクロシステムからマクロシステム、サイエンスからテクノロジーまで、多種多様な研究者が先端研に集まり、特徴ある研究活動をしている様子がよく伝わってきました。

宮野所長のお話の後には、福祉、バリアフリー、コミュニケーションをキーワードに二人の先生からそれぞれ講義をしていただきました。最初にお話いただいたのは、人間情報工学分野を専門とされる伊福部達先生です。近年耳にすることが多くなってきた「ユニバーサル・デザイン」とはどのような概念であるのか、そしてその研究開発には当事者の視点が欠かせないというお話が印象的でした。

駒場キャンパスIIの時計塔。講義はこの建物で行われました
駒場キャンパスIIの時計塔
講義はこの建物で行われました
宮野所長による先端研紹介の様子
宮野所長による先端研紹介の様子

次にお話しいただいたのは、バリアフリー分野を専門とされる福島智教授です。福島教授は3歳で右目、9歳で左目を失明し、18歳のとき突発性難聴で失聴された全盲ろう者です。主なコミュニケーション手段は指点字で、授業でも指点字を通じて受講生との議論が行われました。ご自身の体験と実感に基づかれたバリアフリー研究のお話は、受講生に大きな刺激となったようです。先生が紹介されたヴィクトール・フランクルの提示した図式「絶望」=「苦悩」-「意味」が、とても印象的でした。

お昼には、午前中に講義していただいた先生方と、午後の施設見学に対応して下さる若い研究者、大学院生の皆さんと一緒にお話しながら昼食をいただきました。それぞれの方が魅力的な研究をされており、一緒に食事をいただいただけでも、若い研究者の研究にかける情熱がよく伝わってきました。

午後は研究室見学です。まずは、教室の方で見学させていただく各分野の先生方から、それぞれの研究内容の概略を短い時間で紹介していただきました。登壇いただいたのは、順番に情報ネットワーク分野の森川博之教授(情報)、ゲノムサイエンス分野の油谷浩幸教授(医学・生命)、エネルギー関連分野の中野義昭教授(エネルギー)です。それぞれの分野においてどんな課題があり、それに対してどのように取り組まれているのかについて簡潔にお話いただきました。

先生方のお話の後、受講生は3つのグループに分かれて、それぞれ先端研の大学院生および職員の皆さんに案内されて、順番に3つの分野の研究室の見学をさせていただきました。

福島教授による講義の様子
福島教授による講義の様子
先端研の中を案内される受講生ら。とても寒い日でした
先端研の中を案内される受講生ら
とても寒い日でした

情報分野の森川研究室では、大学院生の皆さんが取り組まれている研究を、実演を交えながら紹介していただきました。さまざまなセンサーをネットワークに接続することで、生産性の向上のみならず、新たなアプリケーションやサービスの創出の可能性があることを見せていただき、将来の情報社会の一旦を垣間見ることができました。

ゲノムサイエンス分野の油谷研究室では、油谷教授から実際にゲノムシーケンサを動かしてDNA解読をしている様子を見させていただきました。医学部人体病理の石川俊平助教からは、肺癌に関してのミニレクチャーに加え、実際に顕微鏡下に肺癌細胞をレーザーで単離する操作を見せていただきました。

エネルギー関連研究では、岡田至崇研究室の八木修平助教から、高効率ソーラーパネルの開発に欠かせない薄膜蒸着装置を使った実験の様子を解説していただきました。中野研究室の渡辺健太郎助教からは、次世代集光型高効率太陽電池についてのお話をうかがい、中野研究室のクリーンルームでは宮野研究室の渡邊良祐研究員の協力も得て、受講生一同、防塵衣に着替えての見学となりました。最先端の施設を活用しながら、日夜研究に励む若い研究者の皆さんの熱意に触れたことも、先端研見学の大きな収穫であったと思います。

若い研究者の方から、それぞれが取り組まれている研究の説明を受けます
若い研究者の方から、それぞれが取り組まれている研究の説明を受けます
防塵服に着替えて、クリーンルームの中を見学
防塵服に着替えて、クリーンルームの中を見学
油谷教授によるゲノムシーケンサーの解説
油谷教授によるゲノムシーケンサーの解説


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