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プログラムレポート ~柏キャンパス見学(第9期)~

2013年6月29日

EMP第9期では、6月21日、東京大学主要キャンパスのひとつである柏キャンパス(千葉県)の施設見学を行いました。
2000年に新しい学問領域の創造を目指して開設された柏キャンパスでは、様々な新しい取り組みが行われており、その最先端分野の研究室を訪問し、そこで行われている研究活動の実際に触れてきました。

見学に先立ち、物性研究所の家 泰弘教授から「温度と低温物理学」のミニレクチャーと柏キャンパスの概要の説明があり、物性研究所の屋上からキャンパス全体および周辺の概観を俯瞰しました。

柏キャンパス風景
柏キャンパス風景
家教授によるミニレクチャー
家教授によるミニレクチャー
ピペットを使い溶液のセル注入に挑戦
柏キャンパスのさまざまな実験施設
を支える低温液化室の見学


その後は2班に分かれて、物性研究所の超強磁場実験棟と先端分光実験棟を見学しました。
国際超強磁場科学研究施設では、嶽山正二郎教授から簡単な説明を受けた後、実験施設に移動して見学を行いました。
嶽山教授、松田康弘准教授の案内で見学した破壊型の電磁濃縮超強磁場発生装置は、巨大なコンデンサーに貯められた膨大な電流を一気に流すことで、600~700テスラに及ぶ超強力な磁場を瞬間的に発生させることができ、実験によってねじ曲がったり砕け散った部品の数々に、磁場の力の凄まじさを感じました。
こうした磁場を生成するためには大量の電力が必要であり、その発電・供給も研究施設内で行っているということで、金道浩一教授、徳永将史准教授の案内により、世界最大の発電能力を有する直流発電機としてギネスブックにも登録されているフライホイール付き直流発電機を見学しました。自転車を利用した手作りの蓄電実験を通じて巨大なフライホイール型直流発生装置の原理を説明していただき、大変よく理解できました。

説明する嶽山教授
説明する嶽山教授
電磁濃縮超強磁場発生装置の解説をする松田准教授(左)
電磁濃縮超強磁場発生装置の解説をする松田准教授


フライホイール型直流発電機の解説をする徳永准教授
フライホイール型直流発電機の解説をする徳永准教授
フライホイール型直流発生装置の原理を自転車を用いたモデルを用いて説明する金道教授
フライホイール型直流発生装置の原理を自転車を
用いたモデルを用いて説明する金道教授(右から2番目)


極限コヒーレント光科学研究センターの先端分光実験棟は、大規模なクリーンルームと除振床を設置し、極限的性能を持つレーザーの開発やレーザーを用いた物性研究を行っています。板谷治郎准教授の研究室では、高強度超短パルスレーザーを用いた超高速物理現象に関する研究を行っており、「高次高調波」とよばれるコヒーレント短波長光の発生装置などの実験装置群の見学をしました。
また、秋山英文准教授の研究室では、半導体量子ナノ構造の光物性や、ヘテロ構造・ナノ構造に基づく半導体レーザーや太陽電池のデバイス物理、ホタル生物発光の生物物理などを、レーザー分光・顕微分光・光学計測技術を用いて研究しており、量子細線レーザー等の見学やホタルのルシフェラーゼと呼ばれる酵素を使った生物発光反応実験等を体験しました。

実験装置について解説する板谷准教授
実験装置について解説する板谷准教授
ホタルの酵素を使った生物発光反応実験について説明する秋山教授
ホタルの酵素を使った生物発光反応実験
について説明する秋山准教授


昼食のあと、マーカス・ワーナー特任研究員の案内で、カブリ数物連携宇宙研究機構(IPMU)の施設を見学しました。IPMUは世界から数学、物理学、天文学の研究者を集め、共同で「宇宙はどうやって始まったのか」「宇宙は何でできているのか」「宇宙はこれからどうなるのか」といった謎に挑んでいます。専任研究者の半数以上は外国人で、公用語は英語という国際性の高い施設です。研究者間での活発な議論が行われることを狙い、お互いに顔を合わせる機会を多く創り出すような工夫が随所に見られます。入口から屋上階まで各研究室を繋ぐらせん状の廊下、建物の中央にある広々としたラウンジ、いつでも議論ができるよう用意された黒板に数式がたくさん書かれている様子など、ここで日々行われている議論を想像しながら、楽しく見学しました。

広々としたIPMUラウンジ
広々としたIPMUラウンジ
数式で埋め尽くされたIPMUの黒板の前で説明するワーナー特任研究員
数式で埋め尽くされたIPMUの黒板の前で
説明するワーナー特任研究員


午後は新領域創成科学研究科基盤科学実験棟のふたつの実験室を見学しました。先端エネルギー工学専攻の鈴木宏二郎教授に案内していただいた風洞実験施設では、極超音速(マッハ7~8)と高エンタルピー(気流温度最高約 1000℃)の風洞があり、実演も交えながら、いかにして高速・高温な空気の流れを作り出すかを丁寧に解説していただきました。
先端エネルギー工学専攻の川面洋平 学振特別研究員には、超高温プラズマ実験装置の説明をしていただきました。内部で生成されたプラズマの様子をとらえたビデオは、幻想的でもあり、科学の魅力の奥深さを感じることができました。

極超音速高エンタルピー風洞実験装置
極超音速高エンタルピー風洞実験装置
極超音速熱風洞のパネルの前で説明する鈴木教授
極超音速熱風洞のパネルの前で
説明する鈴木教授
超高温プラズマ実験装置 RT-1
超高温プラズマ実験装置 RT-1


以上の研究施設見学を行った後、最後に、新領域創成科学研究科の伊藤耕三教授より「面白くて役に立つソフトマター」の講義がありました。8の字架橋構造を持つゲルの物性の話に始まり、その素材を利用していかにしてベンチャービジネス立ち上げ、どのような成果をあげているのか、受講生一同興味深くお話を伺いました。

ガイガー・ミューラー管で放射線量を測定    ガイガー・ミューラー管で放射線量を測定
見学後の休憩の合間での、家教授による超伝導の実演は驚きの連続でした
伊藤教授による講義
伊藤教授による講義

今回の柏キャンパス見学では、世界でも一、二を競うような高精度の実験環境が整えられた広いキャンパス、そしてそれらを駆使し、知の最前線に立って、前人未踏の最先端の研究に取り組む研究の現場の臨場感を身近に感じ、座学では得ることのできない貴重な体験となりました。

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