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プログラムレポート ~柏キャンパス見学(第11期)~

2014年6月15日

EMP第11期では、6月6日、東京大学主要キャンパスのひとつである柏キャンパス(千葉県柏市)の施設見学を行いました。2000年に新しい学問領域の創造を目指して開設された柏キャンパスでは、様々な新しい取り組みが行われており、その最先端分野の研究施設を見学しました。

見学に先立ち、物性研究所の家泰弘教授から、柏キャンパスの概要についてお話しいただきました。従来の枠組みには入らない先進的な研究系も多く集まる柏キャンパスには、本郷キャンパスなど他のキャンパスと違った魅力があることがわかりました。その後、「磁石、磁力、磁場」についてのミニレクチャーがあり、昼食後には、その実演がありました。

家教授によるミニレクチャー
家教授によるミニレクチャー
家教授による実演は驚きの連続でした
家教授による実演は驚きの連続でした
伊藤教授による「ソフトマター」の講義
伊藤教授による「ソフトマター」の講義

続いて、Amir Babak Aazami特任研究員の案内で、カブリ数物連携宇宙研究機構(IPMU)の施設を見学しました。IPMUは世界から数学、物理学、天文学の研究者を集め、共同で宇宙の謎に挑んでいます。専任研究者の半数以上は外国人で、公用語は英語という国際性の高い施設です。
研究者間での活発な議論が行われることを狙い、入口から屋上階まで各研究室を繋ぐらせん状の廊下、建物の中央にある広々としたラウンジやテラスなど、お互いに顔を合わせる機会を多く創り出すような工夫が随所に見られます。いつでも議論ができるよう用意された黒板にはたくさんの数式が書き込まれており、ここで日々行われている議論を想像しながら、楽しく見学しました。

以上の研究施設見学を行った後、物性研究所に戻り、新領域創成科学研究科の伊藤耕三教授より「面白くて役に立つソフトマター」の講義がありました。8の字架橋構造を持つゲルの物性の話に始まり、その素材を利用していかにしてベンチャービジネス立ち上げ、どのような成果をあげているのか、受講生一同興味深くお話を伺いました。

IPMUの建物の屋上
IPMUの建物
広々としたIPMUラウンジと数式で埋め尽くされた黒板
広々としたIPMUラウンジ
と数式で埋め尽くされた黒板
説明するAazami特任研究員
説明するAazami特任研究員(一番右)

昼食の後は2班に分かれて、物性研究所の超強磁場実験棟と先端分光実験棟を見学しました。国際超強磁場科学研究施設では、パルス強磁場を用いて強力な磁場を発生させ、物質の性質を変化させたり、物質の電子状態を調べる研究を行っており、国内外の強い磁場を必要とする物性共同研究などに寄与しています。
最初に、嶽山正二郎教授、松田康弘准教授の案内のもと、破壊型の電磁濃縮超強磁場発生装置を見学しました。巨大なコンデンサーに貯められた膨大な電流を一気に流すことで、700~800テスラに及ぶ超強力な磁場を瞬間的に発生させることができ、実験によってねじ曲がったり、砕け散った部品の数々に、磁場の力の凄まじさを感じました。

説明するについて嶽山教授
超強磁場実験棟について説明する嶽山教授
電磁濃縮超強磁場発生装置の解説をする松田准教授
電磁濃縮超強磁場発生装置の解説をする松田准教授


金道浩一教授、徳永将史准教授の案内により、ギネスブックにも登録されている世界最大の発電能力を有する直流発電機としてフライホイール付き直流発電機を見学しました。金道研究室では、様々な用途に応じて特殊なマグネットの開発を行っています。金道教授が開発したマグネットは、線材強度や緻密な巻き方などに工夫があり、「金道マグネット」とも呼ばれており、非破壊パルス強磁場(単パルス)としては、世界最高の87.7テスラという記録を樹立しているそうです。

「金道マグネット」を手にして説明する金道教授
「金道マグネット」を手にして説明する金道教授
ロングパルス強磁場実験棟について説明する徳永准教授
ロングパルス強磁場実験棟について説明する徳永准教授


極限コヒーレント光科学研究センターの先端分光実験棟は、大規模なクリーンルームと除振床を設置し、極限的性能を持つレーザーの開発やレーザーを用いた物性研究を行っています。
辛埴教授の研究室では、レーザーと光電子科学の両者を結びつけた新しい光科学を目指し、その中で特に重要と思われる究極のエネルギー分解、時間分解、空間分解を可能にする3つの分野で、世界最高の性能とそれを用いた新しい物性研究を行っています。辛埴教授からレーザー研究についてひととおりの解説をしていただいた後、極限レーザー実験室で、開発中の最先端レーザーなどを見学をしました。

秋山英文准教授の研究室では、量子細線や量子細線レーザーを中心に、ナノ構造(ナノメートル=1000分の1マイクロメートルのサイズを持つ非常に小さいもの)の物理を研究しています。秋山准教授の解説で、量子細線レーザー等の見学やホタルのルシフェラーゼと呼ばれる酵素を使った生物発光反応実験等を体験しました。

極限コヒーレント光科学研究について説明する辛教授
極限コヒーレント光科学研究について
説明する辛教授
実験装置について解説する秋山准教授
実験装置について解説する秋山准教授
ホタル酵素を使った生物発光反応実験
ホタルの酵素を
使った生物発光反応実験

続いて、新領域創成科学研究科基盤科学実験棟の二つの実験室を見学しました。 先端エネルギー工学専攻 融合デザイン学講座の鈴木宏二郎教授の研究室では、高速旅客機(極超音速機) や大気圏に突入する宇宙探査機など超高速飛行体の未来図を考案し、「かたち」とその周りにできる「流れ」との関係について探求しています。鈴木教授に案内していただいた風洞実験施設では、極超音速(マッハ7~8)と高エンタルピー(気流温度最高約 1000℃)の風洞があり、実演も交えながら、いかにして高速・高温な空気の流れを作り出すかを丁寧に解説していただきました。

先端エネルギー工学専攻 プラズマ理工学講座の吉田善章教授研究室では、吉田教授の解説により、超高速流プラズマ実験装置(RT-1実験装置)を見学しました。真空容器内に超伝導マグネットを磁気浮上させ、それがつくる双極子磁場によって、宇宙に浮かぶ天体の磁気圏と同じ構造のプラズマを生成できる装置です。天体の磁気圏に似た構造のプラズマを実験室に作り出し、先進的核融合を可能にする超高温プラズマの新領域に挑戦しています。

極超音速熱風洞のパネルの前で説明する鈴木教授
極超音速熱風洞のパネルの前で
説明する鈴木教授
極超音速高エンタルピー風洞実験装置
極超音速高エンタルピー風洞実験装置
プラズマについて解説する吉田善章教授
プラズマについて解説する吉田善章教授

今回の柏キャンパス見学では、知の最前線に立って前人未踏の最先端の研究に取り組む研究の現場の臨場感を身近に感じ、座学では得ることのできない貴重な体験をすることができた一日でした。  

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