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プログラムレポート ~柏キャンパス見学(第17期)~

2017年6月25日

EMP第17期では、6月23日、東京大学主要キャンパスのひとつである柏キャンパス(千葉県柏市)の施設見学を行いました。2000年に新しい学問領域の創造を目指して開設された柏キャンパスでは、様々な新しい取り組みが行われており、その最先端分野の研究施設を見学しました。

最初に、物性研究所長の瀧川仁教授から、柏キャンパスと物性研究所の概要についてお話しいただきました。続いて、Kavli 数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)の説明を春山富義Kavli IPMU事務部門長よりしていただきました。

柏キャンパス風景
柏キャンパス風景
物性研究所の概要説明をする瀧川所長
物性研究所の概要説明をする瀧川所長
IPMUの概要説明をする春山事務部門長
IPMUの概要説明をする春山事務部門長

説明の後、Anne Ducout特任研究員と広報担当の角林元子学術支援専門職員の案内で、Kavli IPMUの施設を見学しました。Kavli IPMUは世界から数学、物理学、天文学の研究者を集め、共同で宇宙の謎に挑んでいます。専任研究者の半数以上は外国人で、公用語は英語という国際性の高い施設です。
研究者間での活発な議論が行われることを狙い、入口から屋上階まで各研究室を繋ぐらせん状の廊下、建物の中央にある広々としたラウンジやテラスなど、お互いに顔を合わせる機会を多く創り出すような工夫が随所に見られます。いつでも議論ができるよう用意された黒板にはたくさんの数式が書き込まれており、ここで日々行われている議論を想像しながら、楽しく見学しました。

Kavli IPMUの施設見学を行った後、物性研究所に戻り、新領域創成科学研究科の雨宮慶幸教授より「ナノ世界を可視化する放射光科学」の講義がありました。

説明するDr. Anne Ducout(左から3人目)
説明するDr. Anne Ducout
(左から3人目)
Kavli 財団創設者のフレッド・Kavli 氏の肖像前で説明する角林学術支援専門職員
Kavli 財団創設者フレッド・Kavli 氏の肖像
前で説明する角林学術支援専門職員
Kavli IPMUの建物
Kavli IPMUの建物

昼食の後、金道浩一教授より超強磁場実験棟の概要説明、岡﨑浩三特任准教授、谷 峻太郎助教より先端分光実験棟の概要説明をしていただきました。

その後、2班に分かれて、物性研究所の超強磁場実験棟と先端分光実験棟を見学しました。
国際超強磁場科学研究施設では、パルス強磁場を用いて強力な磁場を発生させ、物質の性質を変化させたり、物質の電子状態を調べる研究を行っており、国内外の強い磁場を必要とする物性共同研究などに寄与しています。
最初に、松田康弘准教授、小濱芳允助教の案内のもと、破壊型の電磁濃縮超強磁場発生装置を見学しました。巨大なコンデンサーに貯められた膨大な電流を一気に流すことで、700~800テスラに及ぶ超強力な磁場を瞬間的に発生させることができ、実験によってねじ曲がったり、砕け散った部品の数々に、磁場の力の凄まじさを感じました。現在、1,000テスラの発生に向けた開発も進行中。

電磁濃縮法のコイルについて説明をする松田准教授
電磁濃縮法のコイルについて
説明をする松田准教授
電磁濃縮超強磁場発生装置の解説をする小濱助教
電磁濃縮超強磁場発生装置の
解説をする小濱助教

次に、金道浩一教授、徳永将史准教授の案内により、ギネスブックにも登録されている世界最大の発電能力を有する直流発電機としてフライホイール付き直流発電機を見学しました。金道研究室では、様々な用途に応じて特殊なマグネットの開発を行っています。金道教授が開発したマグネットは、線材強度や緻密な巻き方などに工夫があり、「金道マグネット」とも呼ばれており、非破壊パルス強磁場(単パルス)としては、世界最高の85.8テスラという記録を樹立しているそうです。

「金道マグネット」について説明する金道教授
「金道マグネット」について
説明する金道教授
フライホイール型直流発電機の解説をする徳永准教授
フライホイール型直流発電機の
解説をする徳永准教授

極限コヒーレント光科学研究センターの先端分光実験棟は、大規模なクリーンルームと除振床を設置し、極限的性能を持つレーザーの開発やレーザーを用いた物性研究を行っています。
岡﨑特任准教授の研究室では、主に世界最高性能を持つ極低温超高エネルギー分解能レーザー角度分解光電子分光装置を用いた非従来型超伝導体の超伝導機構解明や 高次高調波レーザー時間分解光電子分光装置を用いた非平衡電子状態の観測、光誘起相転移の機構解明等を目的とした研究を行っています。岡﨑特任准教授の解説により、極限レーザー実験室の見学をしました。
小林洋平准教授の研究室では、最先端レーザーの研究開発とそれを用いた精密・高強度光科学の研究を行っています。谷 助教の案内で、開発中の最先端レーザーの見学をしました。

実験装置について解説する岡﨑特任准教授
実験装置について解説する岡﨑特任准教授
開発中のレーザーついて説明する谷 助教
開発中のレーザーついて説明する谷 助教

続いて、新領域創成科学研究科基盤科学実験棟の二つの実験室を見学しました。
先端エネルギー工学専攻 プラズマ理工学講座の吉田善章教授研究室では、西浦正樹准教授の解説により、超高速流プラズマ実験装置(RT-1実験装置)を見学しました。真空容器内に超伝導マグネットを磁気浮上させ、それがつくる双極子磁場によって、宇宙に浮かぶ天体の磁気圏と同じ構造のプラズマを生成できる装置です。天体の磁気圏に似た構造のプラズマを実験室に作り出し、先進的核融合を可能にする超高温プラズマの新領域に挑戦しています。

先端エネルギー工学専攻 融合デザイン学講座の鈴木宏二郎教授の研究室では、主に宇宙輸送システムや宇宙探査に関する極超音速高エンタルピー(超高速超高温)流体および飛行体システムの研究を行っています。鈴木教授に案内していただいた風洞実験施設では、極超音速(マッハ7~8)と高エンタルピー(気流温度最高約 1000℃)の風洞があり、いかにして高速・高温な空気の流れを作り出すかを、衝撃波のデモ実験も交えながら、丁寧に解説していただきました。

超高温プラズマ実験装置 RT-1について説明する西浦准教授
超高温プラズマ実験装置 RT-1について
説明する西浦准教授
極超音速熱風洞について説明する鈴木教授
極超音速熱風洞について
説明する鈴木教授

今回の柏キャンパス見学では、知の最前線に立って前人未踏の最先端の研究に取り組む研究の現場の臨場感を身近に感じ、座学では得ることのできない貴重な体験をすることができた一日でした。

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