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プログラムレポート ~柏キャンパス見学(第22期)~

2019年12月19日

EMP第22期では、12月13日、東京大学主要キャンパスのひとつである柏キャンパス(千葉県柏市)の施設見学を行いました。2000年に新しい学問領域の創造を目指して開設された柏キャンパスでは、様々な新しい取り組みが行われており、その最先端分野の研究施設を見学しました。

最初に、物性研究所長の森初果教授から、柏キャンパスと物性研究所の概要についてお話しいただきました。続いて、カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)の説明を佐々木節Kavli IPMU副機構長/特任教授よりしていただきました。​

柏キャンパス風景
柏キャンパス風景
物性研究所の概要説明をする森所長
物性研究所の概要説明をする森所長
Kavli IPMUの概要説明をする佐々木山副機構長
Kavli IPMUの概要説明をする
佐々木副機構長

概要説明の後、Wentao Luo特任研究員、Hyunbae Park特任研究員、広報担当の角林元子学術支援専門職員の案内で、Kavli IPMUの施設を見学しました。Kavli IPMUは世界中から数学、物理学、天文学の研究者を集め、共同で宇宙の謎に挑んでいます。専任研究者の半数以上は外国人で、公用語は英語という国際性の高い施設です。
建物の中央にある広々としたラウンジでは、全ての研究者に午後3時のティータイムに参加することが課せられており、研究者間での活発な議論が行われています。議論ができるよう用意された黒板にはたくさんの数式が書き込まれており、ここで日々行われている議論を想像しながら、楽しく見学しました。

ラウンジで説明するLuo特任研究員(左)と角林学術支援専門職員(右)
ラウンジで説明するLuo特任研究員(左)と角林学術支援専門職員(右)
ラウンジで説明するPark特任研究員
ラウンジで説明するPark特任研究員
Kavli IPMUの建物
Kavli IPMUの建物

施設見学を行った後、物性研究所に戻り、金道浩一教授より超強磁場実験棟の概要説明、板谷治郎准教授、近藤猛准教教より先端分光実験棟の概要説明をしていただきました。

2班に分かれて、物性研究所の超強磁場実験棟第二総合研究棟・先端分光実験棟とを見学しました。
国際超強磁場科学研究施設では、パルス強磁場を用いて強力な磁場を発生させ、物質の性質を変化させたり、物質の電子状態を調べる研究を行っており、国内外の強い磁場を必要とする物性共同研究などに寄与しています。
最初に、松田康弘准教授、小濱芳允准教授の案内のもと、破壊型の電磁濃縮超強磁場発生装置を見学しました。巨大なコンデンサーに貯められた膨大な電流を一気に流すことで、700~800テスラに及ぶ超強力な磁場を瞬間的に発生させることができ、実験によってねじ曲がったり、砕け散った部品の数々に、磁場の力の凄まじさを感じました。昨年、1,200テスラの発生に成功し、記録を更新したとのことです。

電磁濃縮法のコイルについて説明をする松田准教授
電磁濃縮法のコイルについて
の説明をする松田准教授
電磁濃縮超強磁場発生装置の解説をする小濱助教
電磁濃縮超強磁場発生装置の
解説をする小濱准教授

次に、金道教授、徳永将史准教授の案内により、ギネスブックにも登録されている世界最大の発電能力を有する直流発電機としてフライホイール付き直流発電機を見学しました。金道研究室では、様々な用途に応じて特殊なマグネットの開発を行っています。金道教授が開発したマグネットは、線材強度や緻密な巻き方などに工夫があり、「金道マグネット」とも呼ばれており、非破壊パルス強磁場(単パルス)としては、世界最高の85.8テスラという記録を樹立しているそうです。

マグネットについて解説をする金道教授
マグネットについて
解説をする金道教授
フライホイール型直流発電機について説明をする徳永准教授</div>
フライホイール型直流発電機について
説明をする徳永准教授


極限コヒーレント光科学研究センターの先端分光実験棟は、大規模なクリーンルームと除振床を設置し、極限的性能を持つレーザーの開発やレーザーを用いた物性研究を行っています。

板谷治郎准教授の研究室では、高強度超短パルスレーザーを用いた超高速物理現象に関する研究を行っています。板谷准教授の解説により、「高次高調波」とよばれるコヒーレント短波長光の発生装置などの実験装置群の見学をしました。

近藤 猛准教授の研究室では、極限レーザーを励起光源とする超高分解能角度分解光電子分光装置の開発および角度分解・スピン分解・時間分解光電子分光で見る超伝導やトポロジカル量子相、放射光を利用した光電子分光で研究する強相関電子系物理について研究しています。近藤准教授の案内で、開発中の最先端レーザーの見学をしました。

研究ついて説明する板谷准教授
研究ついて説明する板谷准教授
開発中のレーザーついて説明する近藤准教授
開発中のレーザーついて説明する近藤准教授


その後、広いキャンパス内を横断してキャンパスの最西端にある大気海洋研究所の見学をしました。同研究所は2010年4月1日、海洋研究所と気候システム研究センターが統合して、新しい名前でスタートしました。気候システム、海洋地球システム、海洋生命システムの三つの研究系と海洋学際研究領域、四つの研究センターがあります。

見学に先立ち、所長の河村知彦教授から研究所の概要説明、白井厚太朗准教授からは高空間分解能二次イオン質量分析計(ナノ・シムス)を用いた研究の概要について、兵藤晋教授からは海洋生物飼育実験施設の概要についてのミニレクチャーがありました。

ミニレクチャーのあとは、2班に分かれて、兵藤教授の案内で飼育実験施設の見学を行いました。ふ化しかかっているトラザメの卵、シロサケなど、貴重な飼育魚類の水槽が所狭しと並んでいました。
次に、高畑直人助教の解説のもと、ナノ・シムスを見学しました。この装置は、光や電子の代わりにイオンを使って微小領域を見る顕微鏡のようなもので、微小領域の元素、同位体組成が分析できます。これらを使い、木の年輪のような貝殻の化学組成の濃淡を1日単位まで細かく調べることができるそうです。

大気海洋研究所の概要説明をする河村所長
大気海洋研究所の概要説明をする
河村所長
飼育実験施設について説明する兵頭教授(右から3番目)
飼育実験施設について
説明する兵藤教授(右から3番目)
ナノ・シムスについて解説する高畑助教
ナノ・シムスについて解説する
高畑助教


「気候変動と海洋」の講義をする>羽角教授
「気候変動と海洋」の講義をする
羽角教授

以上の施設見学を行った後、大気海洋研究所に戻り、羽角博康教授から「気候変動と海洋」と題して講義をしていただきました。
海洋が地球の気候変動に対して果たしている役割には未解明の部分も大きく、 地球温暖化問題を考える上で、海洋研究がいかに重要であるかを改めて認識する こととなりました。

今回の柏キャンパス見学では、世界でも一、二を競うような高精度の実験環境が整えられた広いキャンパス、そしてそれらを駆使し、知の最前線に立って、前人未踏の最先端の研究に取り組む研究の現場の臨場感を身近に感じた一日で、まさに、贅沢な「知の冒険」を体験する貴重な機会となりました。

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