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プログラムレポート ~柏キャンパス見学(第21期)~

2019年6月18日

EMP第21期では、6月14日、東京大学主要キャンパスのひとつである柏キャンパス(千葉県柏市)の施設見学を行いました。2000年に新しい学問領域の創造を目指して開設された柏キャンパスでは、様々な新しい取り組みが行われており、その最先端分野の研究施設を見学しました。

最初に、物性研究所長の森初果教授から、柏キャンパスと物性研究所の概要についてお話しいただきました。続いて、カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)の説明を佐々木節Kavli IPMU副機構長/特任教授よりしていただきました。​

柏キャンパス風景
柏キャンパス風景
物性研究所の概要説明をする森所長
物性研究所の概要説明をする森所長
Kavli IPMUの概要説明をする佐々木山副機構長
Kavli IPMUの概要説明をする
佐々木副機構長

概要説明の後、Wentao Luo特任研究員、Matthias Weissenbacher特任研究員と広報担当の角林元子学術支援専門職員の案内で、Kavli IPMUの施設を見学しました。Kavli IPMUは世界中から数学、物理学、天文学の研究者を集め、共同で宇宙の謎に挑んでいます。専任研究者の半数以上は外国人で、公用語は英語という国際性の高い施設です。
建物の中央にある広々としたラウンジでは、全ての研究者に午後3時のティータイムに参加することが課せられており、研究者間での活発な議論が行われています。議論ができるよう用意された黒板にはたくさんの数式が書き込まれており、ここで日々行われている議論を想像しながら、楽しく見学しました。

Kavli 財団創設者フレッド・Kavli 氏の<br>肖像前で説明する<br>角林学術支援専門職員
Kavli 財団創設者フレッド・Kavli 氏の
肖像画の前で説明する
角林学術支援専門職員
ラウンジで説明する<br>Dr. Matthias Weissenbacher
ラウンジで説明する
Dr. Matthias Weissenbacher
ラウンジで説明するDr. Wentao Luo
数式が書かれたホワイトボードの前で
説明するDr. Wentao Luo

Kavli IPMUの施設見学を行った後、物性研究所に戻り、新領域創成科学研究科の雨宮慶幸特任教授より「ナノ世界を可視化する放射光科学」の講義がありました。

昼食の後、金道浩一教授より超強磁場実験棟の概要説明、岡﨑浩三准教授より先端分光実験棟の概要説明をしていただきました。その後、2班に分かれて、物性研究所の超強磁場実験棟と先端分光実験棟を見学しました。

国際超強磁場科学研究施設では、パルス強磁場を用いて強力な磁場を発生させ、物質の性質を変化させたり、物質の電子状態を調べる研究を行っており、国内外の強い磁場を必要とする物性共同研究などに寄与しています。
最初に、金道教授、松田康弘准教授の案内のもと、破壊型の電磁濃縮超強磁場発生装置を見学しました。巨大なコンデンサーに貯められた膨大な電流を一気に流すことで、700~800テスラに及ぶ超強力な磁場を瞬間的に発生させることができ、実験によってねじ曲がったり、砕け散った部品の数々に、磁場の力の凄まじさを感じました。昨年、1,200テスラの発生に成功し、記録を更新したとのことです。
次に、金道教授、徳永将史准教授の案内により、ギネスブックにも登録されている世界最大の発電能力を有する直流発電機としてフライホイール付き直流発電機を見学しました。金道研究室では、様々な用途に応じて特殊なマグネットの開発を行っています。金道教授が開発したマグネットは、線材強度や緻密な巻き方などに工夫があり、「金道マグネット」とも呼ばれており、非破壊パルス強磁場(単パルス)としては、世界最高の85.8テスラという記録を樹立しているそうです。

電磁濃縮法のコイルについて<br>説明をする松田准教授
電磁濃縮法のコイルについて
説明をする松田准教授
ギネス記録について解説をする金道教授
ギネス記録について
解説をする金道教授
フライホイール型直流発電機の説明をする徳永准教授
フライホイール型直流発電機
の説明をする徳永准教授

極限コヒーレント光科学研究センターの先端分光実験棟は、大規模なクリーンルームと除振床を設置し、極限的性能を持つレーザーの開発やレーザーを用いた物性研究を行っています。
秋山英文教授の研究室では、半導体量子ナノ構造の光物性や、ヘテロ構造・ナノ構造に基づく半導体レーザーや太陽電池のデバイス物理、ホタル生物発光の生物物理などを、レーザー分光・顕微分光・光学計測技術を用いて研究しています。秋山教授の解説により、半導体レーザーなどの見学をしました。

岡﨑准教授の研究室では、主に世界最高性能を持つ極低温超高エネルギー分解能レーザー角度分解光電子分光装置を用いた非従来型超伝導体の超伝導機構解明や 高次高調波レーザー時間分解光電子分光装置を用いた非平衡電子状態の観測、光誘起相転移の機構解明等を目的とした研究を行っています。岡﨑准教授の解説により、極限レーザー実験室の見学をしました。

半導体レーザーの実験装置について解説する秋山教授
半導体レーザーの実験装置について解説する秋山教授
実験装置について説明する岡﨑准教授
実験装置について説明する岡﨑准教授


休憩をはさみ、生産技術研究所附属千葉実験所に移動しました。千葉実験所は、2017年4月に千葉市から柏キャンパス内に機能移転しました。航空機の格納庫のような大空間実験室を備えた研究実験棟Ⅰ、充実した海洋工学水槽施設を有する研究実験棟Ⅱ、ITS(高度道路交通システム)関連研究に代表される大規模な屋外実験を行う実験フィールド、特徴的な張力バランス制御を駆使したテンセグリティー構造モデルスペース(ホワイトライノⅡ)等が新営され、幅広い研究活動を特徴づける重要な役割を担っています。

福谷克之 千葉実験所長より千葉実験所の概要説明をしていただいた後、3班に分かれて見学をしました。

中野公彦教授の研究室では、自動車の自動運転技術への注目が高まる中で、ドライバの機能拡張を目指し、協調制御、ヒューマン・マシン・インターフェース、高度センシングなどの、人間を指向したモビリティ工学の研究を行っています。中野准教授の案内で、ドライビングシミュレータを始めとするITS実験フィールドの見学をしました。

千葉実験所の概要について説明する福谷所長
千葉実験所の概要について説明する福谷所長
実験鉄道車両について説明する中野教授
実験鉄道車両について
説明する中野教授

先進ものづくりシステム連携研究センターでは、産学官の連携により、ものづくりに関する先進的・革新的研究開発を進め、高付加価値生産、環境対応型生産ならびに省資源型生産に貢献しています。臼杵年教授の案内により、先進ものづくりの研究の現場を見学しました。

海洋環境工学研究室では、マイクロ波パルスドップラーレーダを用いたリモートセンシングによる、波浪、海上風、津波・潮位、流氷などの海面の物理環境を観測するシステムの研究開発、波浪・流れなど海洋再生可能エネルギー利用システムの研究開発、浮体構造物及び水中線状構造物などの海洋構造物における波浪と流れの影響に関する研究を行っています。吉田善吾技術専門職員の案内で、風路付き造波回流水槽、海洋工学水槽を見学しました。

CMIについて説明する臼杵教授
CMIについて説明する臼杵教授
海洋工学水槽の解説をする吉田技術専門職員
海洋工学水槽の解説をする
吉田技術専門職員
海洋工学水槽
海洋工学水槽

今回の柏キャンパス見学では、知の最前線に立って前人未踏の最先端の研究に取り組む研究の現場の臨場感を身近に感じ、座学では得ることのできない貴重な体験をすることができた一日でした。

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