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プログラムレポート ~柏キャンパス見学~

2009年12月21日

晴天に恵まれた見学会
晴天に恵まれた見学会

第3期EMPでは、12月4日に東京大学柏キャンパスの見学会を行いました。柏キャンパスに集まるさまざまな研究施設を訪問し、そこで行われている最先端の研究について見聞を深めることが目的です。

まず受講生を迎えていただいたのが、柏キャンパス共同学術経営委員会委員長・物性研究所所長の家泰弘教授です。家先生から柏キャンパスについての説明を受けた後、物性研究所の屋上にあがってキャンパス全体を俯瞰しました。広々とした開放感溢れる柏キャンパスには、本郷キャンパスなど都心のキャンパスとはまた違った魅力があることを実感しました。極低温での実験を行うためのシールドルームを備えた実験室や、実験に使われる液体ヘリウムを供給する低温液化室など、柏キャンパスで行われるさまざまな実験を支えている施設の案内もしていただきました。

低温液化室にて家教授に説明を受ける
低温液化室にて家教授に説明を受ける

次に見学したのは、物性研究所の先端分光研究部門に属する極限レーザー実験室と、国際超強磁場科学研究施設に属する超強磁場実験室です。極限レーザー実験室では、渡部俊太郎教授から、アト秒パルスの発生原理と実際の実験装置、そしてその応用までを教えていただきました。エアシャワーを浴びて入ったレーザー光の飛び交う広大な実験エリアは、科学の営みの力強さを感じさせてくれる空間でもありました。

引き続き、超強磁場実験室では、まず嶽山正二郎教授と松田康弘准教授の案内で、破壊型の電磁濃縮超強磁場発生装置を見学しました。巨大なコンデンサーに貯められた膨大な電流を一気に流すことで、600テスラに及ぶ超強力な磁場を瞬間的に発生させるその装置は、見ているだけでも圧巻でありました。さまざまな実験で吹き飛んだ部品による装置の傷跡も生々しく、実験の迫力を物語っていました。一方、徳永将史准教授からは非破壊型の強磁場発生装置を案内していただきましたが、こちらも核融合実験装置で使われていた巨大なフライホイール発電機が導入されており、破壊型同様にスケールの大きさを感じました。

極限レーザー実験室にて渡部教授から説明を受ける
極限レーザー実験室にて渡部教授から説明を受ける
嶽山教授と松田准教授による電磁濃縮超強磁場発生装置の解説
嶽山教授と松田准教授による
電磁濃縮超強磁場発生装置の解説
非破壊型の強磁場発生装置の仕組みを徳永准教授から学ぶ
非破壊型の強磁場発生装置の仕組みを徳永准教授から学ぶ


清家准教授による環境棟見学ツアー
清家准教授による環境棟見学ツアー

昼食を挟んで、午後は新領域科学研究科の見学を行いました。社会文化環境学専攻の清家剛准教授からは、実験的要素を多分に盛り込んで設計された環境棟について案内していただきました。この最新の棟は、次の5つのコンセプトで設計されました:(1) 学融合のインキュベータとしての建築、(2) 省エネルギーに対応した外観、(3) 自然エネルギーを利用した屋内環境制御、(4) 研究のダイナミックな展開に対応できる柔軟性、(5) 居住者にわかりやすい防災体制。また建物の整備はPFI(Private Finance Initiative)を活用して施工、管理されているとの話に、興味深く聞き入っている受講生も多かったようです。

メダカを使って遺伝子の安定性と多様性起源の研究をされている先端生命科学専攻の三谷啓志教授の研究室では、メダカの飼育が行われている水槽がずらっと並ぶラボに圧倒されました。研究室の尾田教師には、メダカを使った簡単な実験を見せていただきました。また、長い年月をかけて全国各地から集めてきたメダカの屋外飼育施設は圧巻でした。それぞれ異なる遺伝子をもち、それがチンパンジーと人間ほど違う、また、ほとんどが採集地ではすでに絶滅してここにしか生息していないことも驚きでした。

メダカの水槽が並ぶ三谷教授のラボ
メダカの水槽が並ぶ三谷教授のラボ
屋外にあるメダカ飼育施設
屋外にあるメダカ飼育施設

最後に訪れたのは、環境棟の中に長さ10メートルの実験水槽を展開されている海洋技術環境学専攻の早稲田卓爾准教授の研究室です。海難事故につながるフリーク波がどのようにしてできるのか、実験水槽を使ってわかりやすく説明していただきました。

以上の研究施設見学を行った後、物性研究所に戻り、最後に、新領域創成科学研究科副研究科長の伊藤耕三教授から「面白くて役に立つソフトマター」と題して講義をしていただきました。8の字架橋構造を持つゲルの物性の話に始まり、その素材を利用していかにしてベンチャービジネス立ち上げ、どのような成果をあげているのか、受講生一同興味深くお話を伺いました。

今回の柏キャンパス見学会に参加した受講生の皆さんからは、座学では得ることのできない貴重な体験に対して多くの感想をいただきました。知の最前線に立って、さまざまな装置や手段を駆使しながら、前人未踏の地を目指す研究者の熱意に感じ入った方も多かったようです。難しいからこそ面白い、そんな科学の魅力を堪能した1日でした。

大型水槽のある早稲田准教授の研究室
大型水槽のある早稲田准教授の研究室
伊藤教授による講義の様子
伊藤教授による講義の様子

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