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プログラムレポート ~柏キャンパス見学(第4期)~

2010年7月12日

第4期EMPでは、7月2日に東京大学柏キャンパスの見学会を行いました。柏キャンパスは誕生してからまだ10年程度と、東京大学の中ではもっとも新しい研究拠点のひとつです。最先端の実験施設を見学し、研究の実際に触れることが今回の訪問の目的です。

見学に先立ち、物性研究所所長の家泰弘教授から、柏キャンパスの概要についてお話しいただきました。従来の枠組みには入らない先進的な研究系も多く集まる柏キャンパスには、本郷キャンパスなど他のキャンパスと違った魅力があることがわかりました。

家教授には、極低温での実験を行うためのシールドルームを備えた実験室や、実験に使われる液体ヘリウムを供給する低温液化室など、柏キャンパスで行われるさまざまな実験を支えている施設の案内もしていただきました。


極低温での実験を行うためのシールドルームの解説を行う家教授
極低温での実験を行うための
シールドルームの解説を行う家教授
柏キャンパスに集まるさまざまな実験施設を支える低温液化室
柏キャンパスに集まるさまざまな実験施設を支える
低温液化室

次に見学したのは、物性研究所の先端分光研究部門に属する極限レーザー実験室と、国際超強磁場科学研究施設に属する超強磁場実験室です。極限レーザー実験室では、物性研究所先端分光部門の辛埴教授からレーザー研究についてひととおりの解説をしていただいた後、同じく先端分光部門の小林洋平准教授、板谷治郎准教授から、それぞれの進められている研究について解説していただきました。近年ではレーザーは身近な存在となってきましたが、その最先端ではどのような挑戦が行われているのか。極限のレーザーを創り出す技術や、その多彩な応用について理解を深めることが出来ました。

引き続いて訪問したのが、国際超強磁場科学研究施設です。講義室にて徳永将史准教授から簡単なレクチャーを受けた後、金道浩一教授に導かれて、実験施設の見学を行いました。実験によってねじ曲がったり砕け散った部品の数々は、私たちがふだん接している磁場のイメージとはかけ離れた磁場の力を見せつけてくれました。磁場の生成のために大量の電力を供給するための巨大なフライホイール型直流発生装置や、部屋いっぱいに並べられた巨大コンデンサー群は、受講生にとってもたいへん印象深かったようです。

超強磁場によってねじ曲がった部品を示す金道浩一教授
超強磁場によってねじ曲がった部品を示す金道浩一教授
たくさんの防震台が並ぶ極限レーザー実験室
たくさんの防震台が並ぶ極限レーザー実験室

柏キャンパスに集う学生や研究者でにぎわう学内レストランで昼食を囲んだ後、午後は新領域創成科学研究科基盤科学実験棟のふたつの実験室の見学を行いました。基盤科学研究系先端エネルギー工学専攻の岡本光司准教授に案内していただいた風洞実験施設では、実演も交えながら、いかにして高速・高温な空気の流れを作り出すかを丁寧に解説していただきました。先端エネルギー工学専攻の吉田善章教授には、天体の磁気圏に似た構造のプラズマを安定的に生成することができる超高速流プラズマ実験装置の見学を行いました。内部で生成されたプラズマの様子をとらえたビデオは、幻想的でもあり、科学の魅力の奥深さを感じることができました。

吉田善章教授に案内していただいた超高速流プラズマ実験装置
吉田善章教授に案内していただいた
超高速流プラズマ実験装置
最高でマッハ9まで作り出せる風洞実験施設
最高でマッハ9まで作り出せる
風洞実験施設


以上の研究施設見学を行った後、物性研究所に戻り、最後に、新領域創成科学研究科副研究科長の伊藤耕三教授から「面白くて役に立つソフトマター」と題して講義をしていただきました。8の字架橋構造を持つゲルの物性の話に始まり、その素材を利用していかにしてベンチャービジネス立ち上げ、どのような成果をあげているのか、受講生一同興味深くお話を伺いました。

今回の柏キャンパス見学会では、研究者たちがどのような手段によって新しい世界観を切り開いているのか、限られた時間ではありましたが、その現場に入り込むことができたと思います。決して少なくない資源を投入しながら、人類が科学を進めることにどのような意義があるのか。受講生ひとりひとりにとって、科学について考える良い機会となったようです。実験施設の見学では宇宙や天体の話が例に出されることが多く、これまでの授業で話を聞いた理学系の授業との関連を強く感じました。一見まったく関係が無く見えるような分野でも、お互いに関係しあっている様子を実感できたことも、大きな収穫であったと思います。


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