お知らせ

プログラムレポート ~農学デー(第7期)~

2012年6月22日

第7期EMPでは、2012年6月8日に農学生命科学研究科がある弥生キャンパスで「農学デー」を実施しました。午前中は、動物医療センターと植物病理学研究室・植物医科学研究室の見学を行いました。

東京大学附属動物医療センター
東京大学附属動物医療センター

動物医療センターでは、農学生命科学研究科獣医臨床病理学研究室の松木直章教授より
「ペットの老年性疾患と癌や脳疾患を中心にその高度画像診断」についてのミニレクチャーを受けた後、松木教授とセンター長の辻本元教授から説明を受けながら、診察室や手術室をはじめ、超音波診断装置、X線診断装置、CT、MRI等の画像診断設備を案内していただきました。
時代と共に動物も人と同じように多様かつ複雑な医療ニーズが生まれるようになった昨今、一次診療をサポートする二次診療が求められるようになっています。その中で、高度な医療設備を備え、二次診療に特化した、高度な疾病を治療するための「二次病院」である当センターの果たす役割は大きく、今後の獣医療の発展のためにも重要な位置づけであることを実感しました。

説明する辻本センター長(左)と松木教授(右)
説明する辻本センター長(左)と松木教授(右)
動物の診療をする若手獣医師たち
動物の診療をする若手獣医師たち
画像診断室の見学
画像診断室の見学


プラムポックスウイルス(ウメ輪紋ウイルス)の検査用イムノクロマト試験紙
プラムポックスウイルス
(ウメ輪紋ウイルス)の
検査用イムノクロマト試験紙

次に、農学生命科学研究科の難波成任教授が研究リーダーを務める植物病理学研究室・植物医科学研究室では、若手研究員から、ゲノム解読用の全自動DNA解析装置や植物・微生物の遺伝子操作用の機器の説明を受け、電子顕微鏡では実際にウイルス粒子を観察しました。また、GFP遺伝子により光るウイルスに感染した植物の観察をし、一部、実験の体験もしました。極めて微量の DNA サンプルから特定の DNA 断片を短時間に大量に増幅することができるPCR法の実験では、ピペットを使って溶液をセルに注入するという体験をしました。見ているのと実際にやってみるのとでは大違いで、ピペットの操作にとまどいつつも、きれいな実験結果が出て大成功でした。さらに研究室で開発され、現在国内で発生し、問題となっているプラムポックスウイルス(PPV)の全国調査等に利用されているPPVウイルス検出キットを使って植物からウイルスの検出も試みました。

「植物の健康」を講義する難波教授
「植物の健康」を講義する難波教授

さらに、昼食を交えながら、研究室の若手研究者たちから現在取り組んでいる研究の様子などを聞き、彼らの研究に対する情熱に感銘を受けました。

午後は、難波教授から「植物の健康」と題した講義を受けて植物医科学を概観し、その知識を持ってキャンパス内のフィールドワークへと出発しました。受講生は4つの班に分かれて、弥生キャンパスの広い敷地で、それぞれ異なる植物病に罹患したと思われる植物を採集し、構内の「植物病院」に持ち込み、研究員らの指導の下、植物病の正体を探りました。生物顕微鏡を使って病変を観察し、植物病の分厚い図鑑と照らし合わせながら、チームで議論、診断、発表し、植物医師の仕事を体験しました。


ヤマモモこぶ病
ヤマモモこぶ病
ファイトプラズマに感染して花が葉になったアジサイ
ファイトプラズマに感染して
花が葉になったアジサイ
植物病院で生物顕微鏡を使って診断している様子
植物病院で生物顕微鏡を
使って診断している様子


生物顕微鏡で見た「ナシ赤星病」
生物顕微鏡で見た「ナシ赤星病」
植物病の診断結果のチーム発表
植物病の診断結果のチーム発表
ミツバさび病菌の夏胞子の顕微鏡写真
ミツバさび病菌の夏胞子の顕微鏡写真


受講生からは、人間の病気、動物の病気までは意識しても、「植物が病気にかかる」という発想やイメージを持ち合わせていませんでしたが、「植物の病気」という概念と実態に触れ、植物に甚大な被害をもたらす病原体やその感染メカニズムへの関心が高まり、大変有意義な体験となったという声が多く聞かれました。

page top