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プログラムレポート ~柏キャンパス見学(第19期)~

2018年6月25日

EMP第19期では、6月22日、東京大学主要キャンパスのひとつである柏キャンパス(千葉県柏市)の施設見学を行いました。2000年に新しい学問領域の創造を目指して開設された柏キャンパスでは、様々な新しい取り組みが行われており、その最先端分野の研究施設を見学しました。

最初に、物性研究所長の森初果教授から、柏キャンパスと物性研究所の概要についてお話しいただきました。続いて、カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)の説明を春山富義Kavli IPMU副機構長/事務部門長よりしていただきました。

柏キャンパス風景
柏キャンパス風景
物性研究所の概要説明をする森所長
物性研究所の概要説明をする森所長
Kavli IPMUの概要説明をする春山副機構長
Kavli IPMUの概要説明をする
春山副機構長

概要説明の後、Todor Eliseev Milanov准教授、Khee-Gan Lee特任講師、Tilman Hartwig特別研究員と広報担当の角林元子学術支援専門職員の案内で、Kavli IPMUの施設を見学しました。Kavli IPMUは世界中から数学、物理学、天文学の研究者を集め、共同で宇宙の謎に挑んでいます。専任研究者の半数以上は外国人で、公用語は英語という国際性の高い施設です。
建物の中央にある広々としたラウンジでは、午後3時のティータイムに参加することが課せられており、研究者間での活発な議論が行われています。議論ができるよう用意された黒板にはたくさんの数式が書き込まれており、ここで日々行われている議論を想像しながら、楽しく見学しました。

ラウンジで説明する(左から)Dr. Todor Eliseev Milanov、Dr.Lee Khee-Gan、Dr.Tilman Hartwig
ラウンジで説明する(左から)Dr. Todor Eliseev Milanov、
Dr. Khee-Gan Lee、Dr.Tilman Hartwig
Kavli IPMUの建物
Kavli IPMUの建物

昼食の後、見学に先立ち、金道浩一教授より超強磁場実験棟の概要説明、辛 埴教授、板谷治郎准教授より先端分光実験棟の概要説明をしていただきました。

その後、2班に分かれて、物性研究所の超強磁場実験棟と先端分光実験棟を見学しました。
国際超強磁場科学研究施設では、パルス強磁場を用いて強力な磁場を発生させ、物質の性質を変化させたり、物質の電子状態を調べる研究を行っており、国内外の強い磁場を必要とする物性共同研究などに寄与しています。
最初に、金道教授、松田康弘准教授の案内のもと、破壊型の電磁濃縮超強磁場発生装置を見学しました。巨大なコンデンサーに貯められた膨大な電流を一気に流すことで、700~800テスラに及ぶ超強力な磁場を瞬間的に発生させることができ、実験によってねじ曲がったり、砕け散った部品の数々に、磁場の力の凄まじさを感じました。現在、1,000テスラの発生に向けた開発も進行中とのことです。

次に、徳永将史准教授の案内により、ギネスブックにも登録されている世界最大の発電能力を有する直流発電機としてフライホイール付き直流発電機を見学しました。金道研究室では、様々な用途に応じて特殊なマグネットの開発を行っています。金道教授が開発したマグネットは、線材強度や緻密な巻き方などに工夫があり、「金道マグネット」とも呼ばれており、非破壊パルス強磁場(単パルス)としては、世界最高の85.8テスラという記録を樹立しているそうです。

電磁濃縮法について解説する金道教授
電磁濃縮法について解説する金道教授
電磁濃縮超強磁場発生装置の解説をする松田准教授
電磁濃縮超強磁場発生装置の
解説をする松田准教授
フライホイール型直流発電機の解説をする徳永准教授
フライホイール型直流発電機の
解説をする徳永准教授

極限コヒーレント光科学研究センターの先端分光実験棟は、大規模なクリーンルームと除振床を設置し、極限的性能を持つレーザーの開発やレーザーを用いた物性研究を行っています。
辛埴教授の研究室では、レーザーと光電子科学の両者を結びつけた新しい光科学を目指し、その中で特に重要と思われる究極のエネルギー分解、時間分解、空間分解を可能にする3つの分野で、世界最高の性能とそれを用いた新しい物性研究を行っています。辛教授の解説により、開発中の最先端レーザーなどの見学をしました。
板谷治郎准教授の研究室では、高強度超短パルスレーザーを用いた超高速物理現象に関する研究を行っています。板谷准教授の解説により、「高次高調波」とよばれるコヒーレント短波長光の発生装置などの実験装置群の見学をしました。

実験装置について解説する辛教授
実験装置について解説する辛教授
開発中のレーザーついて説明する板谷准教授
開発中のレーザーついて説明する板谷准教授

休憩をはさみ、生産技術研究所附属千葉実験所に移動しました。千葉実験所は、2017年4月に千葉市から柏キャンパス内に機能移転しました。航空機の格納庫のような大空間実験室を備えた研究実験棟Ⅰ、充実した海洋工学水槽施設を有する研究実験棟Ⅱ、ITS(高度道路交通システム)関連研究に代表される大規模な屋外実験を行う実験フィールド、特徴的な張力バランス制御を駆使したテンセグリティー構造モデルスペース(ホワイトライノⅡ)等が新営され、幅広い研究活動を特徴づける重要な役割を担っています。

大口敬教授/千葉実験所管理運営委員会委員長より千葉実験所の概要説明、須田義大教授よりITS実験フィールドの説明、臼杵 年教授よりCMI(先進ものづくりシステム連携研究センター)の概要説明、林 昌奎教授より海洋工学水槽の概要説明をしていただいた後、3班に分かれて見学をしました。

千葉実験所の概要について説明する大口教授
千葉実験所の概要について説明する大口教授
ITS実験フィールドについて説明する須田教授
ITS実験フィールドについて説明する須田教授

中野公彦准教授の研究室では、自動車の自動運転技術への注目が高まる中で、ドライバの機能拡張を目指し、協調制御、ヒューマン・マシン・インターフェース、高度センシングなどの、人間を指向したモビリティ工学の研究を行っています。中野准教授の案内で、ドライビングシミュレータを始めとするITS実験フィールドの見学をしました。

先進ものづくりシステム連携研究センターでは、産学官の連携により、ものづくりに関する先進的・革新的研究開発を進め、高付加価値生産、環境対応型生産ならびに省資源型生産に貢献しています。臼杵教授の案内により、先進ものづくりの研究の現場を見学しました。

林 昌奎教授の研究室では、マイクロ波パルスドップラーレーダを用いたリモートセンシングによる、波浪、海上風、津波・潮位、流氷などの海面の物理環境を観測するシステムの研究開発、波浪・流れなど海洋再生可能エネルギー利用システムの研究開発、浮体構造物及び水中線状構造物などの海洋構造物における波浪と流れの影響に関する研究を行っています。林教授の案内で、風路付き造波回流水槽、海洋工学水槽を見学しました。

実験鉄道車両について説明する中野准教授
実験鉄道車両について
説明する中野准教授
CMIについて説明する臼杵教授
CMIについて説明する臼杵教授
風路付き造波回流水槽の<br>解説をする林教授
風路付き造波回流水槽の
解説をする林教授

今回の柏キャンパス見学では、知の最前線に立って前人未踏の最先端の研究に取り組む研究の現場の臨場感を身近に感じ、座学では得ることのできない貴重な体験をすることができた一日でした。

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